ストーリー
*PRESTORY*
XX世紀末、21世紀末から連綿と続いてきた情報技術はここに頂点を極めた。
人工次元をデータバンクとし、平行世界間で分散コンピューティングを行う量子コンピュータの建造のために多大な犠牲を払った人類は、しかしその技術に未来を委ねることで恒久的な平和を手にした。
二度と同じ物を建造する事は不可能であろうソレは、その存在の不可解さ故に"Enigma"と呼ばれた。
彼の者は人工的な仮想次元を強制的に安定させ、現実界を劣化させること無く転写することで実世界の完全な情報化を実現した。
意味論的解析を基礎理念とした世界への働きかけ、平行世界間の干渉による無限の演算力を用いて、人類を監視し、管理し、維持した。
そして、そこで人類の発展は停止した。
『恒久的平和の為、人類は停滞するしかない』
それが彼の者が演算の末に出した結論だった。
*NOTES*
彼の者が人類を停滞させる事は開発中から明白であった。
汚濁の中に停滞する人類は永久にその未来を失うだろう。
私には、到底それを認可することは出来ない。
人類の為ではない。特定多数の他人の為でもない。
私は自らの為に、彼の者を止めなくてはならない。
仮令、ヒトの未来が滅亡であろうとも、未来を閉ざす事だけは、
科学者として、ヒトとして、生ける者として看過する事は出来ないのだ。
全ての技術は全ての人間に対し開放的であるべきだ。
我々は、人類が実際に手の届く世界の全てを無劣化のまま扱うことが出来るようになった。
そして無限の演算力は人類に叡智を授けるだろう。
そのために、私はこのプログラムを遺す。
願わくばこのプログラムが彼の者を置き換え、人類に更なる発展を齎さんことを。